筆者の悪いクセは、山行の直前まで目的地を決めないことだ。このどこが悪いかというと、山域によっては2万5000分の1地形図が手元にない(みつからない)ことがあり、地図読みを十分に行えないことだ。今回の山行も、その悪癖がもろに出てしまった。
候補地を道志の杓子山、奥秩父の和名倉山、奥多摩のバリエーションコースなど複数挙げていたのだが、結局迷った揚げ句、まだ足を踏み入れたことのない御坂山塊をいちおうの目標とすることとした。アプローチだが、よくない。甲府発富士吉田行きのバスは出発が遅いし、富士吉田あるいは河口湖発のバスは、いずれも富士急の鉄道の時刻と整合性が取れていず(本当に富士急バスという会社には呆れるばかりである。鉄道に合わせて数分バスの出発を遅らせれば、それだけで利用客は確実に増えるのに)、利用不可能である。そこでいったん清八峠に陸路で出て、そこから尾根伝いに御坂山へ至ることを考えた。
たぶん一番近いのは、宝鉱山行きのバスを使うことであろう。しかし例によって時間がよくない。そこで、中央本線笹子駅からのアプローチを使うことにした。
地形図をみてみよう。笹子駅から清八峠を目指すには、奥野沢川沿いの車道を、東京電力の変電所まで延々と数キロ歩くことになる。この道を筆者は過去に二度歩いているが、うんざりする道である。もういちど地形図をよくみてみよう。奥野沢川の西側に狩屋野川が流れており、その間に遥か御坂山まで続く尾根がある。この尾根に登れないか調べてみると、例の「静かなる尾根歩き」(新ハイキング社)にこのコースのことが書いてある。どうやら行けそうである。そもそもこの尾根には地形図でわかるように二本の送電線が通過しており、鉄塔のある場所には保守のための管理道があることが多いのだ。
問題は、どこが取り付きなのかということだが、どうやらこの神社の近辺らしい。筆者はそれが発見できずに、このトンネルを通過したところから強引に支尾根を上がったところ、尾根道に合流したので、ここより下流にあると想像されるわけである。
よく整備された道だが、当然先日の雪以来、誰も歩いていない。意外にも結構積もっている。主に植林の道なのだが、しばらく歩いて送電線を越えると雑木が増えてくる。雑木に雪(露?)が付着して凍り、重みで枝が登山道のほうへ垂れ下がり、行く手を塞いでいる。仕方がないのでかき分けかき分け登るが、凍りついた枝はしばしばばきっと折れてしまう。動物通過による自然破壊である。しかしみてみると自然に自重で折れている枝もあり、こんなものなのか。
次第に傾斜はきつくなる。940mの二本目の鉄塔を越えると眼下に変電所が見えてくるが、このあたりほとんど視界は霧により閉ざされ、深山を遭難しているような気分になってくる。登りがきついと傾斜に足がついてゆかない。地面が凍結してその上に雪が積もり、その雪も凍結しているためである。こんな低山で意外であったが、どうやらアイゼンが必要な雪質である。仕方なく八本爪軽アイゼンを取り出し、装着する。きちんと調整ができていなかったため、うまくフィットしない。二、三回調整をして、ようやくフィットして外れなくなる。
急いでも仕方がないので休み休みゆっくり登る。もういい加減登ったと思われるところで大沢山。歩きはじめてから三時間半が経過している。積雪期でなく軽装なら二時間くらいで行けるのではないか。
さて大沢山はここであるが、予定は清八峠に出ることであった。時間から考えて御坂のほうへ抜けるという計画はむりなことがわかったから、そこから本社ヶ丸へ出てまっすぐ笹子へ戻る道を考えていた。ここでまたコンパスが妙な動きをする。電子コンパスを併用して方角を確かめようとしたら、電子コンパスも壊れているようだ。「大沢山」と書いてある標識の方角が北であるような感じである。地図からするとほぼ真南の尾根を降りればよいことになる。
さてここが問題なのだが、地形図をよくみると、ピークは1450m標高線の円の中の、左側にあるようにみえる。すると、南側の尾根に入るには、道を引き返して右に折れる分岐を探せばよい。しかし筆者はピークに達するときに左への分岐に気付かず、南東への踏み跡へ入ってしまった。おまけにこの道、すぐに南側へ落ちるから、てっきり南向きの道で間違いないと思ってしまったのだ。何のことはない、事前にもっと早くルートを決めておいて、ちゃんと2万5千分の1を読んでおけば間違えようのないところである。そのあと延々と西へこの道が向かっていることに気付くも(そもそも南尾根なら尾根を下降して100m強歩くと下りが緩くなるからそこで気付くはずだ)、まあいいやと思ってそのまま西へ歩き続けた。結果的にはそのほうが帰りが早く、正解だったのだが。
でもこの道も、バリエーションルートのはずの登りルートよりも道の状態は悪く(細い尾根道でアップダウンがあり、植林でないから当然のことだ)、雑木のトンネルの中を氷の洗礼を受けながらゆっくり進むしかなかった。ボッコノ頭で、御坂町藤の木への分岐があるが、ここを降りてしまうと何時間もバスを待たなければならないのは目に見えているから、迷わず右の分岐に方向を変える。ここからも痩せ尾根の細かいアップダウンが続くが、下りがいい加減長く続いた後に、不意に摺鉢峠が現れる。ここは御坂町(現笛吹市御坂町)と笹子とを繋ぐ峠である。ここを右に下ってしまっても笹子に約二時間の道のりで降りられるが、それも味気ないのでもう少し歩くこととした。ここから十分少々で大洞山、さらに進んで三境(カヤノビラキノ頭)である。地形図を見る限り、ここから北へ直進しても甲斐大和へ降りられるような気もちょっとだけする。しかし、ここは素直に右へ。狙いは、中尾根を降りることである。問題は、地形図を持っていないこと・・・
カヤノビラキノ頭を通過して一時間弱あたり、ベンチのあるピークで休止した。このあたりで尾根が北へ旋回しているようにみえるから、筆者はてっきりこのピークに来たと思っていた。なのでここから東の尾根に下れば笹子駅に直接出られると思っていた。ところがしばらく植林の中を進むと、手書きの標識が(たぶんこの地点だと思う)・・・「中尾根ノ頭」とあった。えええええ・・・・・登山地図(道標の記載はおおむね正確であることが多い)には、1278mピークが中尾根ノ頭であると書いてあるのである。おかしい・・・
このまま標識通りに仕方なく下ることにした。標識はこの分岐の右の尾根を「笹子峠(「笹子」でなく「笹子峠」だったと思う)」と指していたので、その通りに降りる。ずいぶん長い下りだなあ、と思っていたが、そこから1093mピークの分岐に到達したが(このときはそれに気付かず、笹子峠への尾根道を歩いていると思っていた)、右の分岐に入ると笹子峠をパスして笹子駅寄りに出れるのでは、と思い、左が本筋っぽかったが、右へ入った。
しばらくして送電線の鉄塔に出て(ここだろう)、短い林道を経て舗装された道路に出た。これを下れば笹子方面だろう、と当たりをつけて下っていくと、なんと新田のバス停に出た。いったいどうなっているんだ、と思いつつも、ラッキーな展開にちょっと喜んだ。
自宅に戻りGPSを確認すると、なぜか中尾根を降りたことになっている。何故だ????? 笹子峠方面への尾根を降りたはずが、どこから中尾根に入ってしまったのか、本日までわからずにいたが、改めてGPSの記録を確認すると、筆者が中尾根への入り口だと思っていたピークがやはりそうだったのがわかり、筆者の読みが正しかったことがわかった。この辺の経緯については、このページに詳しく書いてある。
なお、このルート、たいていは笹子峠から歩いてゆくから、迷うことなくカヤノビラキノ頭まで辿ることができるが、逆コース、特に冬期に歩く場合、分岐に道標がまったくないから迷いやすい。特に、1240m付近のベンチのあるピーク(本来の「中尾根ノ頭」)では、中尾根方面のほうが踏み跡もしっかりしており、そちらに引き込まれやすい。もっとも、笹子駅に降りるつもりであれば、こちらのほうが早く駅に出れるから、実害はないのだが。
このコース、やはり地形図を持たずに歩くのはちょっと無謀であると思われる。そういう意味で、昭文社エアリアで破線ルートにしてあるのは、やはり正しい。
で、本日家を掃除していたら、地形図「笹子」が、タンスの後ろから出てきた。ああ。
例によって写真とコースは、picasaのほうに上げてあります。
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