現在、化学物質を吸入したときの、反応性の自律神経症状についてはほぼ八割方改善してきている。衣類については洗濯石鹸に変更することで、衣服、特に木綿の肌着、シャツ、そしてタオルを吸ったときの咽がひりひりする反応は回避できている。残る問題は、書類や書籍が山積みになっている部屋(それはとりもなおさず職場環境である)にいると、喘息のような空咳が出てきて、呼吸が苦しくなってしまうという反応である。それも、前のように、咽がひりついて頭が痛くなってくるという反応に比べればずっと楽なのであるが(自律神経症状よりも咳のほうが、自覚的にはずっと耐えやすいものである)、仕事をする上でこのままでは困ってしまう。
今までの治療を通じて、おそらく最も効果的であったものは、まちがいなく原因物質の除去である。筆者の場合、スピーカーの臭気が部屋から消失したのは、スピーカーを撤去してから約十日くらいかかっている。その間に紙や衣類(合成洗剤)といった新しい物質に過敏症を生じているわけだが、紙はともかく衣類に関してはスピーディーな対策が可能であった。
次に自覚的に有効であったのは、運動療法であった。自律神経症状が出ているときは、吐気、頭痛、腰痛、だるさなどで、自覚的にはとても動ける状態ではないのだが、たとえば線維筋痛症 (fibromyalgia) では、どんなに痛くとも運動することが、痛みの改善につながってくることが知られている。
化学物質過敏症においては、次の二つの側面があると考えられる。
A)単一、あるいは複数の化学物質に対する過敏性
B)その結果出現する自律神経症状
A)に対する治療として、原因物質の回避および有害物質の体外排泄 (detox) があるわけだが、筆者は後者に対してはちょっと懐疑的である。
むしろ、B)の自律神経障害に対する治療としての、運動療法と温熱療法(特にサウナや岩盤浴)は、A)とは独立した効果があるように思われる。つまり、現時点での筆者の状態は、過敏症自体は改善しているようには思われないが、そこから引き起こされる自律神経症状はかなり改善してきているからだ。だから、化学物質過敏の直接の症状、たとえば咽頭痛などについては、これもほとんど変わっていない。
とりあえず、このまま運動療法および温熱療法を続けるしかないであろう。食事についてはアルコールをなるべく避け、ハーブティーなどの温かい飲料を可能な限り摂取するようにしよう。
なお、環境浄化法としての空気清浄機の効果はあまり感じられなかったが(少なくとも筆者に対しては、紙から発生する有害物質の、清浄機による除去は、ほとんど感じられなかった)、浄水器に関しては、化学物質過敏症に対する効果はさておき、米やお茶の味の改善にかなりの効果があるもようである。少なくとも東京においては、残留塩素やトリハロメタン、ダイオキシンなどの問題は、避けては通れないようである。