まず、次の質問を考えてみてほしい。
1)筆者が持っていった装備の中で、利尻岳登山に不要と思われたものは、どれか。
a)簡易トイレ b)登山ストック c)レインウェア d)サポートタイツ e)帽子
2)逆に、筆者が持っていかなかった装備の中で、必要だと痛感したものは、どれか。
a)ピッケル b)ヘルメット c)ザイル・ハーネス d)スパッツ e)GPS
利尻岳には登山道が三つある。そのうち、東南の鬼脇から登るものは上部の崩落が激しく登山禁止となっている。主な二つは北側の鴛泊から登るもの、西側の沓形から登るものである。筆者は当初沓形から登り、鴛泊に下りるコースを考えていた。鴛泊に下りるのだから、宿泊は鴛泊にちかい宿にした方がよいと考えたのは浅はかだった。利尻島の宿は鴛泊と沓形に集中していて(前者は利尻富士町、後者は利尻町となり、自治体が異なる)、ほぼどの宿も登山口までの送迎を行っているのだが、それぞれ最寄りの登山口までしか送迎はやってくれない。しかも、宿の主人曰く、
「朝早いとタクシーは呼べないよ」
がーん・・・東京近郊なら前もって予約しておけばどの時間でも可能なのに・・・
というわけで、鴛泊コース往復となってしまった。後から考えれば沓形に宿を取っておけば、沓形登山口まで送ってもらって、帰りは鴛泊コースから下山し、町まで歩いてバスで帰る、という帰路が取れたのであった。
利尻岳はきれいな独立峰である。裾野は傾斜が緩いが、高度を上げるに従って傾斜は急となり、25,000分の1地形図を見る限り、七合目以降は結構等高線が詰まっている。しかし、登ってみると、地図をみた感じよりは楽に登ることが出来る。
朝四時半頃に鴛泊の登山口に到着。ここでおにぎりを食べて出発。しばらくは沢沿いに進み、それから尾根を巻く道なので、あまり展望はない。六合目あたりから尾根に乗り、鴛泊の町や礼文島が視野に入ってくる。

道は登山者が多いために抉られている感じで、潅木のあいだを縫って歩くような感じだ。ハイマツも結構ある。八合目に長官山という小ピークがあり、これを頂上と勘違いしてがっかりするパーティもあったようだが、それはちゃんと地図を読んでいけばわかることだ。

このへんまでに中高年者のグループをかなり抜かしてきたが、この山はほんとうに高齢者の山である。平均歩行時間九時間ともいわれるこの山、だいじょうぶなのだろうか?
八合目を越えるとザイルが要所に出てくる。通常の山ならあり得ない箇所であり、つくづくよく整備された山だと感心する。この山があるために両自治体共に潤っているわけだから、事故でも起こされたら困るのはわかるが、いくらなんでも手を入れ過ぎだろう。九合目に着くと標識に「ここからが正念場」と書いてある。頂上は目前なのだが、ここからの道は崩壊がひどく、特に下りは危険な道となる。

でも、転倒はありえても滑落は絶対にあり得ない場所なので、その点は安心できる。慎重に足場を探してゆけば決してむずかしい道ではない。けっきょく、頂上に到着したのは朝の九時前で、ゆっくり歩いた割にはコースタイムよりだいぶ早く着くことができた。
ここからは下山であるが、さきの崩壊箇所を慎重に下ってゆく。ここはまったくストックが役立たない場所であり、さりとてほかの場所は道の左右に潅木が生えている箇所が多いために、むしろ両手は木を掴むために空けておいた方がよくて、筆者がおもうに、この山ではストックはまったく無用の長物である。むしろ、足元をよく見ていると、登山道に張りだした潅木にアタマをぶつけることがとても多く(筆者は十回以上やってしまった)、むしろ必須と思われたのは、ヘルメットであった。ちなみに、この山に登るためには、簡易トイレの持参は義務づけられている。道は明瞭であるためGPSは(たとえホワイトアウトしても)不要。スパッツは小石が入ることを防げるかもしれないが、蒸れるため長時間の歩行では靴擦れを増強させるだけであろう。全員がスパッツを付けているという信じられない登山会がこの山にもいたが(あんなに暑いのに)、あれで一人も靴擦れができなかったらどうかしている。
で、結局十三時くらいに登山口に到着。だいぶ時間が余ってしまったので、ポン山〜姫沼というハイキングコースへ足を伸ばすこととする。このハイキングコースの終点が、ちょうど宿にちかいところにあるからである。ポン山、姫沼ともに利尻岳がよく観察できる。

どうのこうのと、結局宿へ着いたのは四時過ぎ。いくらなんでもあのハイキングは蛇足だったか?