« 相談役島耕作 | メイン | 甲武信岳&HIROSHIMA »

石油価格高騰は阻止できるか

 昨今、食料品価格の上昇の背景にもこの石油不足があると言われる。石油は現代社会を動かしている油であるからだが、食料品にせよ石油にせよ、投機筋による余ったカネの投入がその原因と言われている。そして、そのような投機は、岩井克人によれば資本主義の根本をなす行為であり、かつ「本当によいと思ったから投資する」のではなく、「みんなもよいと思うであろうから投資する」というケインズの「美人投票」が投機(つまり岩井によれば投資と投機は同じものだ)の本質である以上は、経済活動は古典派的均衡に達することはなく、不均衡、つまり景気が収縮と膨張を繰り返したり、恐慌が生ずることは資本主義につきものであり、それを安定化することは不可能だ(放任主義的な経済体制においては)、というように主張されている。

 しかしこの岩井のペシミズムは、歴史的にも証明されているように思われる。たとえば、古代中国。富国強兵の時代といえば春秋・戦国時代であるが、この時代にすでに農を軽んじ商に走るという経済活動が、為政者によって敵視されていた。通商こそが経済のダイナミズムである、という観点から、日本中世史を一新したのが網野善彦であったとすれば、網野史学と商業を強圧した為政者、たとえば最終的に中国を統一した秦の歴代の宰相らの姿勢は、180度異なるものであった。しかし、ここで注意しなければならないのは、秦を中国統一に押し上げた立役者である呂不韋は、商人であった、という事実である。重農政策は成功しなかったのである。

 モノを作る(あるいは掘り出す)行為を行う第一次産業・二次産業よりも、貿易あるいは金融というモノの生産に直接関与しない産業のほうが収益がよい(そしてその結果従業員の給与も高く、東大生のあいだでゴールドマン・サックスが一番人気の就職先という結果を生む)という、国家機能および社会生活の維持にとっては大きな危機ともなりうる状態は、すでに二千年前から認識されていて、それを是正しようという政治的な試みはすべて徒労に終わっているのだった。となれば、現代の発達した政治経済学の知識を持ってしても、それは容易ではない、あるいは不可能である、という結論が出ない方が常識的にはおかしい。感覚的には、モノを作る人間よりもモノを転がす人間のほうが得をする(原油価格の高騰で本当に得をしているのは、産油国だろうか?)という事態はおかしいと感じられるのだが、資本主義という制度を採用する限り、理系出身者が文系出身者よりも損をする、という現状は変わることはなく、生産者が報われることも永遠に来ないとすれば、いつまでもこの資本主義という制度は続くのだろうか、と疑問を持たざるを得ない。

最近の読了
 Jack Kerouac "Oh The Road" C
 エドワード・サイード「文化と抵抗」ちくま学芸文庫 B

 ケルアックの代表作で例の"TIME"の「二十世紀の百冊」に選ばれている本書、今となっては"Beat Generation"とは何か、ということを知る以外の意味があるとは思えない。

 サイードの最後のインタビュー集、もちろん、パレスチナ問題に関する彼の飽くことのない意欲が伝わってきて、感動を誘う。サイードは、領土分割案は支持しない。あくまで一国家二民族(正確には、「二」という数字ではあり得ないが)、つまり同じイスラエル国家にイスラエル人とパレスチナ人が共存共栄してゆくという道を探っている。
 しかし、そのプロセスは民主主義によって実現可能なのだろうか? 民主主義の建前からすれば、たとえ「シオニズム」という思想を保持するイスラエル人たちも尊重されなければならない。ましてやシオニストが多数のこの国がシオニストによって運営されてゆくのは、民主主義という政体からすれば正義である。その中でパレスチナとの共存という理想は民主的なプロセスで実現可能なのだろうか? 筆者には、それも民主主義の限界のひとつのように思われる。パレスチナ人とイスラエル人の共存のためには、シオニズムを禁ずるほかはないように思われるからである。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://out-of-date.info/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/1133

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

About

2008年07月18日 19:08に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「相談役島耕作」です。

次の投稿は「甲武信岳&HIROSHIMA」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。