筆者は2ちゃんねるが基本的に好きでない。インターネットを通じた「ワールドワイド
で匿名性が高い」コミュニケーションによって、それによらなければ生まれなかったであ
ろうプロジェクトが発足し、高い成果を挙げる(Linuxなど)といった喜ばしい出来事が
生まれている反面、国民、あるいは世界人類という、ひとりひとりが希薄な人間関係でし
か結ばれない、弱い紐帯によるコミュニティのなかでは、結局匿名性は不特定多数あるい
は特定少数へのやり放題の誹謗中傷を助長するだけになってしまう事態もあちこちで生じ
ている。2ちゃんねるはその代表的な温床であり、これによって廃業や自殺に追い込まれ
たりする不幸なひとびとがすくなからず存在していることを、この2ちゃんねるを利用し
ているひとびと、あるいは運営している人間(彼は民事訴訟で多数敗訴し、損害賠償請求
を課されているにもかかわらず、支払いにまったく応じていないそうだ)はどう考えてい
るのであろう。
googleなどで検索をかけると、2ちゃんねるの記事はすくなからず引っかかってくる。
筆者が八ヶ岳に関する情報を収集しているときに、「八ヶ岳が嫌い」なスレッドというの
が引っかかってきた。当然、「八ヶ岳」が嫌い、ということは、登山が好きな人間の集ま
りであろう。こういう記事はおおむね無害であろうから、ちょっと読んでみた。面白いこ
とがいろいろ書いてある。代表的登山口である美濃戸口付近に駐車する人間たちのマナー
の悪さからはじまって、「登るならせめて諏訪側からじゃなくて、佐久側からにしろ」と
か、「杣添尾根を往復するのが通」とか、参考に(?)なりそうな興味深い記述もある。こんかい、こういった2ちゃんの記事の検証もかねて(嘘)八ヶ岳を実踏破してみることにした。
すでに八ヶ岳、編笠山には二回、権現岳には一回登頂している。いろいろ考えたが、次のどちらかのコースに行こうと決めた。
a)佐久側から主峰赤岳に登り、阿弥陀岳を経由して(美濃戸を通らずに)美濃戸口へ降りるコース
b)杣添尾根を経由して横岳に登り、硫黄岳を経て夏沢峠あるいは赤岳鉱泉に降りるコース
b)はまたの機会とすることとし、a)の赤岳に最初に行くことにした。
新宿駅17:00のあずさに乗ると、小淵沢に19:01に到着し、小諸行き19:38の小海線に乗ることができる。21:36発小海行きの終電に乗るためなら、新宿19:00発のあずさでよい。19:38発の小諸行きなら、清里には20:02に到着である。この電車、19:10くらいにはもう小淵沢駅に到着するので、この車内で夕飯を食べた。清里は無人駅である。この広い待合室に寝袋を広げ、寝る。どうやら土曜日にもかかわらず、この日駅で寝たのは筆者ひとりだけだったらしい。小淵沢の駅なら週末にはかならず駅寝のひとびとがいるのに・・・
4:00に起床、4:45くらいには清里を出発する。ここから美し森までは約1時間、ようやく空が白みかけてくる頃である。美し森には駐車場があって、二、三台クルマがあるが、ほとんど人はいない。ここで缶コーヒを飲み、トイレを済ませてまず美し森山に向かう。ここの頂上は展望台になっていて、清里の市街や八ヶ岳の展望がよい。目指す赤岳と思われる山頂に、灯が点滅しているのが見える。赤岳頂上山荘だろうか。ここから北杜市営のたかね荘、羽衣池を経て、スギの植林の中を歩いてゆくと、やがてスキー場のリフトが見えてくる。ここから数分進んだところが賽の河原と呼ばれるところで、展望が開けている。ここからは南ア北部と赤岳が望見できる。


明らかな尾根道になると、植林は消えてブナなどの原生林になってゆく。ここから一時間ほど歩くと牛首山という小ピークに着く。権現岳方面の展望がある。

この辺りからは割と平坦な道となる。ブナはダケカンバやシラビソなどの針葉樹の原生林に変わってゆく。扇山、2316mピークを過ぎると、正面に赤岳が立ちはだかるのを間近にみることになる。

ここからは手足を使った岩稜登りである。上部に行けば行くほど傾斜は急になり、鎖場も出現する。このあたりから昨晩赤岳頂上小屋に泊まったとおぼしきパーティとすれ違う。全部で十人くらいで、とても八ヶ岳の主峰を休日に登っているとは思えない静けさである。ここまでひとりの快速のおじいさんに追い越されただけで、同じ方向に登っている登山者はまったく見かけない。登ってきた牛首山の向こうに富士がうっすらと見える。この辺りから権現岳から赤岳に向かう、キレットを含む主稜線を臨むことができる。


右が登ってきた真教寺尾根、左が山梨県北杜市と長野県南牧村を分ける県界尾根である。その真ん中にみえるのが美し森の駐車場だ。

最後の岩稜のツメ。左上に主稜線との合流点の道標が見える。

清里駅を出ること五時間あまりで、ようやく頂上へ辿り着く。しかし、「弥栄」って、「すめらみこと、いやさか、いやさか!」という掛け声を思い出して、イヤなのだが。

頂上からの展望はさすがに素晴らしい。このところ好天に恵まれることがなく、ついつい一眼レフを持たずに登ってしまったのだが、遥かに北アルプスが望めるここには、やはり望遠は必須のようであった。さすがに日本百名山だけあり、山頂に来るとどこから湧いてきたのかと思われるくらいの人出であった。
これは方向からすると北アルプスのはず。肉眼では槍ヶ岳らしい鋭峰が確認できた。

ここから阿弥陀岳へ向かう。遠くに見えるのは南アルプス。

一時間半弱で阿弥陀岳山頂へ着く。ここも360°の大展望だ。ここから阿弥陀岳北稜(御小屋尾根)を降りてゆくのだが、おそらく阿弥陀岳には行者小屋経由で登る人が多いらしく、御小屋尾根はそれまでの賑わいが嘘のように静かな尾根であった。それもそう、えらく足場が悪いのだ。筆者も急な下りで数回転んでしまった。土尾根なので危険はないのだが。
諏訪の御柱祭のためのモミを切りだすという御小屋山で、筆者は道間違いをしてしまう。少し直進して御小屋山頂上から北西に下るところ、その手前の分岐で北のほうに道を取ってしまった。筆者が持っている1995年(!)のエアリアマップで、「財産区境界標識、踏み跡に入らぬこと」と書いてあるところである。この踏み跡に入るとどうなるか。地形からみて<<絶対に>>迷子になることはないはずの場所なのであるが、着いた先は筆者が通るまいと思っていた行者小屋・赤岳鉱泉からの下山口である美濃戸だったのである@_@
1995年のマップでは、茅野からのバス終点である美濃戸口にゲートがあり、一般車はその先には進入できず、美濃戸口から美濃戸の登山口までは一時間の車道歩きが必要だということになっている。しかし、このゲートは開放され、今は美濃戸の登山口までクルマの乗り入れが可能になっているのだった。そして、それが美濃戸=諏訪側からのルートが八ヶ岳(赤岳)の標準ルートとなっている理由だったのである。
例えばクルマを使って佐久側から登ってみよう。使える駐車場は美し森のそれと清里スキー場山麓のそれくらいしかない。このふたつを使って、真教寺尾根〜県界尾根の周遊コースを取ることは可能であるが、それには約十時間を必要とする。諏訪側から登れば、行者小屋からの周回コースで七時間くらいで可能であるし、行者小屋または赤岳鉱泉に一泊すれば、まったくムリのない登山が可能である。佐久側には適当な宿泊施設がない。登り始めたら山頂まで到達し、頂上小屋または展望荘に泊まるしかないのだ。要は、諏訪側から登った方がいろいろな意味で<<楽>>なのである。美濃戸の上高地を思わせる賑わいはそれが原因だったのだ。
筆者はここから約30分くらいで美濃戸口まで徒歩で降り、バスを待った。何でも15:10発、19:00新宿到着の高速バスが新設されたそうだが、当日は予約客不足のため運行されなかったそうだ。しかし、バスを利用する人間はごく少数で(休日にもかかわらず全員が座れた)、マイカー登山が八ツの基本らしい。そして、皆アプローチが楽な諏訪側に集中する・・・2ちゃんねるの八ヶ岳非難はそれなりに理由があることだったのである。
筆者もあの山頂(はまだよかったけど)と美濃戸の喧騒にはうんざりしたので、もう八ツには行かないかもしれない。硫黄岳と横岳には行っておきたいのだが、夏沢峠からアプローチするか、2ちゃんねらーのように杣添尾根を往復するか、どちらかを選ぶだろう。「荷物を軽くして楽に登りたい」ツアー登山客のように、安易な方向へ流れてゆくのは時代の流れなのだろうが、すると何のための登山なのだろう? 「テントと食糧を担げない人間は山に登るな」という意見は、筆者にはごくまっとうに思われるし、北海道でも飯豊でも、筆者よりもはるかに高齢のパーティが30kgを超えていそうなザックを担いで登っているのを目撃した。もう日本のかなりの山は高齢者を中心にしたツアー登山客に占領されつつあるが、それがイヤなら避難小屋がない山域にするか(南ア深南部!)、歩行距離が長くヤブっぽい難路(やっぱり深南部?)をルートに選ぶしかないのであろうか。ともかく、赤岳には諏訪側から登ってはならない、と筆者もおもった。
先日の読了
Graham Greene "The Third Man/The Fallen Idol" B
「日本の百年8 果てしなき戦線」 B
グレアム・グリーンの小説、小説的な表現が多く、筆者にはむずかしく感じた。ただ、幸い文意の正確な把握はむずかしくても、ストーリーを追うことはできる。しかしそれができたとて、やはり彼の英語表現を正確に理解しない限り、文学としての妙味を味わうことはできまい。
「果てしなき戦線」は大東亜戦争を描いた章であり、当然読みごたえがある。通常の戦記と違うのは、「なるべく庶民の感じ方、考え方を描こう」というこのシリーズ全体に共通する意図がみられることである。戦争を扱っている本としては大部とは言えない量なので、その視点のユニークさがなかったら平板に終わっていたかもしれない。
こんにちは。コメントありがとうございます。
>当方も解像度の低い古いデジカメを持って行きたくさん撮影しました。八ヶ岳という被写体がよいので
>それなりに満足していましたが、こちらの写真との違いにビックリです。もう絶対に買い換えようと思っ
>ています。
まず当然ながら写真の綺麗さを決めるのはカメラでなく撮影者の腕であります。カメラの性能を云々する前に・・・
というのはもちろん冗談です。あまり構図も考えずばんばん撮っています。この日は快晴で露出不足になることもなく、自分で見ても本当によく写っています。天気によるところが大きいでしょう。
>それで、この日記に掲載されている写真を撮影されたカメラを教えて頂けないでしょうか。内容を
>拝見してDP-1だろうと想像しておりますが、参考に教えて頂きたくよろしくお願いします。いやー
>ほんとうに綺麗です。よろしくお願いします
ご明察のとおりDP-1です。このカメラは特に発色が綺麗なのが特徴です。構造上偽色が発生しないことが大きいのでしょう。しかし、ことインターネットに限れば、リサイズに伴う画質の低下というファクターが大きいように思います。筆者の写真をごらんいただければわかると思いますが、ある時点から画質が急に向上しているはずです。これは、リサイズ時にシャープネスをかけるようにしたからです。
画像を縮小するとdetailがつぶれ、解像感が減少します。それに対してはエッジを強調する(シャープネスをかける)ことで擬似的に防ぐことができます。むしろそちらの効果かなあという気がします。プリントすれば、デジタさんの写真もわたくしのオリジナルも大差ないものになるのではないでしょうか? blogに写真を載せていらっしゃるのであれば、そういった方法で画質の向上が可能です。参考になれば幸いです。
もちろんDP-1はよいカメラです。レンズも素子も素晴らしく、DP-2を買ってしまいたくなります。でも、テレコン(またはワイコン)を出さないのは、企業姿勢として、どうかと。
確かに、DP-1はfour-thirdsのE-3よりも総じて画質は上になります。28mm広角単焦点を
気にしなければ。
>男体山
良い山と思いますが、ぜひ黒岩尾根から隣の女峰山にも!
こんど霧降高原~女峰山~真名子山~男体山の大縦走をひそかに考えています。前日日光入りすれば可能そうです。
コメント (2)
はじめまして。
突然の書き込み申し訳ありません。
先日赤岳に登り、帰って来てから疑問に思った「弥栄」の情報を調べていて、こちらのブログを訪問しました。
書き込んだのは、その弥栄のことではなく、写真の綺麗さに感動したからです。当方も解像度の低い古いデジカメを持って行きたくさん撮影しました。八ヶ岳という被写体がよいのでそれなりに満足していましたが、こちらの写真との違いにビックリです。もう絶対に買い換えようと思っています。
それで、この日記に掲載されている写真を撮影されたカメラを教えて頂けないでしょうか。内容を拝見してDP-1だろうと想像しておりますが、参考に教えて頂きたくよろしくお願いします。いやーほんとうに綺麗です。よろしくお願いします。
投稿者: デジタ | 2009年08月21日 13:26
日時: 2009年08月21日 13:26
ご説明ありがとうございました。よく解かりました。
コメントが本文の最後に追記されているのを見誤り、ご返信が遅くなりました。申し訳ありませんでした。
「撮影者の腕」確かにそのとおりです。ここだ!というところで、よい構図で撮れるというのはまさに腕です。失礼な質問で申し訳ありません。綺麗な理由はそれが一番ですね。
教えて頂いた情報を基に、次のカメラを物色したいと思います。やはりDP-1かなと。10月の初旬に日光の男体山に登る予定です。そのときに持って行こうと思っています。
また綺麗な写真の掲載期待しております。
投稿者: デジタ | 2009年08月24日 01:05
日時: 2009年08月24日 01:05