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天誅組

最近の購入(本)
 富士川游「日本疾病史」東洋文庫

最近の購入(CD)
 B.B.King "Live at the Regel"
 CSN "Box Set"

 購入して気付いたのだが、このBox Setは主にunreleasedのもののために出されたもののようで、オリジナル・アルバムは買い揃える必要があるようだ。

最近の読了
 大岡昇平「天誅組」講談社文芸文庫 B

 大岡の本はすべてA評価をつけてしまいたくなる誘惑に駆られる。本作も力作である。面白いのは・・・解説でも触れられているとおり、本作での主人公は、天誅組の首領である吉村寅太郎ではない。出だしは吉村の人となりが「小説風に」描かれているから、そのように合点するのだが、読み進めてゆくにつれてむしろ鷗外が書いたような史伝体となってゆく。そして、どうやら大岡が描きたかったのは、人間ではなく、幕末という時代におけるひとびとや各勢力のせめぎ合い、そして歴史の一般的な理解とは異なる、大岡が到達した「真相」であるように思われるのだ。

 続編を書くといっていながら、本書自体はまさにここから小説がはじまる、という、天誅組の挙兵の瞬間に終了する。そして、「ここからは理想が崩れてゆく悪夢の四十日間」という書き方をして、その間の吉村の苦悩や葛藤を描くという、小説家としての本領をあっさり放棄している。そして、この滔々たる時の流れを描くために(しかしこの時間的な経過はたったの一年である)膨大な資料を渉猟して、まるで本書が歴史書としても読めるような、そんな手法を取っている。鷗外の史伝は、鷗外自身の独自の視点をむりに押しだすことなく、資料を再構成していくうちに、その文体のなかに鷗外かれ自身の個性を滲ませるという、小説家らしい手法で書かれているのだが、この「天誅組」の半ば以降は、むしろ大岡が小説家としての手腕を、叙述の順番やその呈示のしかた、そして資料の読みといった、歴史家がその個性を発揮する部分に力が入れられていることが興味深い。

 その結果、本書は読者が「小説」に期待する何ものか、を超えるものに成長してしまった。その成長が本書の価値を高めているのかそうではないのかは議論があろうが(小説ではない、という批判にも十分根拠があるように思われるから)大岡の小説家としての一側面を知るために見逃せない格好の作品であると同時に、幕末の政治、とくに幕府内部の権力抗争および徳川幕府崩壊の理由を知りたいひとびとにも必読の作品であることは確実であると思われる。

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2009年07月07日 19:28に投稿されたエントリーのページです。

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