これは、過失犯による事件報道のばあい、「被害者の処罰感情を満足させること」ではなく、「再発を防止すること」であることは明瞭だろう。したがって、トムラウシ遭難事故に関して、散発的ではあるが事実関係が報道されることには、一定の意味があると考える。
では、新型インフルエンザに関しては、どうだろうか。さいきん、マスクを車内でしているひとをほとんどみかけない。しかし、都内で感染が確実に広がっていることは、知られていないかもしれないが、病院で仕事に従事している人間の間では常識であろう。
これであきらかになったことは、マスクは、「かけている個人を防衛するために使う」ものであって、「感染している人間が拡大防止のために使用する」ためのものである、という認識は、ついに普及しなかったということである。参考までに書いておくと、病院で医療用として使われているマスクのほとんどは、後者の目的で使用されるものである。結核患者の病室に入るときに使われるN95マスクなどは数少ない例外である。
かくして、狭い電車の中で、咳やくしゃみをしていても、マスクをかけない人間の数は変わらず、感染は蔓延してゆく。実用性より話題性を常に重んずるマスコミの姿勢がそれに一役買ったことは間違いないだろう。NHKですら。保守派のひとびとがよく口にする「公共心」って、まずこういうところに反映されなければならないのでは。