都合上、12月26日の権現山山行についてはのちほど触れる。
一年最後をどの山で締めくくるか? どうも記録をみるかぎり、去年の最後は東野〜黍殻山〜蛭ヶ岳〜桧洞丸〜石棚山陵の丹沢であった。今年は谷川岳の平標山か蓬峠越えにしようかと思っていたのだが、アイゼン・スパッツを履いて歩くのが面倒で(谷川岳はアイゼン要らないと思うけど)「雪山でかつロングコースを日帰りで帰れる」の条件を満たす山ということで、雲取山を選択した。しかし、事前の計画が甘く、遭難寸前までゆく(大げさだが)。
何と筆者は東日原行き7:25発のバスに乗った後でも行き先を決めていなかった。ゴールは雲取山と決めてはいたのだが(あわよくば飛竜まで行きたいなあと思っていたのだが、トレランでもあるまいし!)、次の四ルートのどれかで行く積もりでいた。
1)東日原〜ヨコスズ尾根〜三ツドッケ〜長沢背稜
2)東日原〜小川谷林道〜酉谷山〜長沢背稜
3)東日原〜日原鍾乳洞〜タワ尾根〜長沢背稜
4)東日原〜林道日原線〜大ダワ林道〜大ダワ
4)は日原林道の歩行だけで2時間以上かかってしまうので、今回はパス。いずれ下山で使用する機会があるであろう。1)と2)は時間がかかり過ぎるかなあと思い、3)を選択したが、おそらく1)2)のルートとそれほど大きな差はないと思われる。ただ、2)はやっぱり小川谷林道の歩行が長い。これは一度経験済みである。
東日原へ到着するのは7時49分となっている。GPSでは歩きはじめた時間は7:56となっている。ここから日原鍾乳洞のところにある一石山神社へ向かう。この神社の境内から登山道ははじまっているが、その旨の道標は、神社の中に行かないと、ない。神社の境内から上を見上げると、真黄色な小動物が。おそらく、テンであろう。カメラを向けて撮ったのだが、あとで確認すると写っていなかったので、どこかへ行ってしまったか? 「目の前をテンが横切ると縁起が悪い」という伝承があるようで、今回の災難もこれが原因か??
ここからは急な斜面に強引にジグザグに切った道で、急登である。あっという間に高度を稼いで、8:52一石山へ到着。ここから、金袋山のミズナラ巨樹へ向かう。巨樹到着、9:05。ここで二人の熟年カップルに逢う。さて、ここからが本番、タワ尾根縦走路である。
植林はほとんどない自然林の中に、水源林巡視路が続いている。よく踏まれた道だ。迷う心配は全くない。積雪も皆無である。1176mピークの人形山へ9:13着。順調だ。12:00くらいには雲取山へ着きたいと思う(距離を考えれば絶対にむりなのだが・・・)。
時折樹間から右手方向が見える。天祖山かと思っていたのだが、違うことにあとで気付く。恐らく鷹ノ巣山ではないだろうか。このあたりからは緩やかな登りで、さほど消耗することもなく1325mの金袋山へ。9:30。同じような自然林の静かな道が続く。9:47篶坂ノ丸。ここが顕著なピークのひとつである。樹相は落葉樹林であり、葉を落とした寂しげな道である。
ここからやや下りになって、急登がはじまる。今までの道とは雰囲気の違った、岩も出てきている道であり、篶坂ノ丸までは登山地図でも(準)一般ルートとして扱っているようである。しかしルートは明瞭、山慣れた人なら迷うことはないだろうが、初心者だけのパーティには勧められない。急登をこなし、平坦になった細い尾根をしばらく進めばタワ尾根の中心部、ウトウの頭である。10:17。ここにはもともと「ウトウ」の有名な絵がかかっていた。しかし前回、筆者が訪れたときには何者かに撤去されていた。それを悲しんだのは筆者だけではなかったのであろう、かの色塗りの力作には落ちるが、12月6日、G.Y氏によって新しい絵が掲げられていたのである。どなたか、新しい絵を書いてくれれば、筆者が持参してくれよう。我と思わん方は、是非。
ここからは地図からは想像できない急坂である。木の根頼りの斜面を慎重に下り、そして次の登りはウトウの頭以上に急峻である。そして次の小ピークは断崖。西側の眺望がよいが、そこには天祖山の無惨な姿が・・・。ここの断崖は直接は降りられず、右を巻いて降りる。ここは逆行(滝谷ノ峰からウトウの頭方向)では迷うことはないが、順行だと見つけにくいかもしれない。
次の1602mへの鞍部で小休止。10:47。あきらかにこの付近で時間を食っている。次の1602mには、「カラ滝(沢?)ノ頭」のプレートが木に直打ちされているが、「大京谷の峰」の別名もあるらしい。ここで前回見かけた軌道に再会。地図上の南側の尾根に降りており、「1600m-1780m」のプレートがある。ここから先は楽にはなるが、風情のないことおびただしい。軌道が終わるとほどなく長沢背稜との合流点へ。11:13。せめて13:00には雲取へ着きたいが、むりだろうな・・・
長沢背稜の登山道は水源林巡視路であり、山頂を通らず山腹を巻くようにつけられている。ピークを踏むように歩いてもいいのだが、それではとても時間が足りないと諦める。途中で水松山(イチイあるいはスイショウが多いところから付けられた名か?)を横切る時にかなり明瞭な踏み跡を発見した。ここには孫惣谷林道からアプローチする道があるらしい。ようやく天祖山分岐へ11:41。さて、ここから芋ノ木ドッケまで、どのくらいあるやら。。。
天祖山分岐からは長沢背稜の北面を巻く道となるため、積雪している。しかしそれなりに通る人がいるようで、踏まれており問題はなく、しかも凍結していないため歩きやすい。長沢山への鞍部からは尾根が狭くなり、巻き道はなくなり尾根通しに歩くことになる。長沢山への登りはすでに長時間歩行した身にはなかなか辛いが、がんばる。長沢山12:14着。これで雲取に13時台に着くという目標がかなり怪しいものとなった。
長沢山から芋ノ木ドッケへの縦走路は奥多摩の中でも最上級に位置する、雰囲気のよい道である。ただし、密林ではなく疎林であり、木々の間から三峰縦走路や石尾根が望見できる。ただ、積雪期装備で疲労困憊した身には(後述)なかなか辛い道でもあり、芋ノ木ドッケは遥か遠くに見える。結局、三峰からの縦走路に合流したのは13:21。この間、ひとりの登山者とすれ違い(たぶん)、ひとりを追い越した。この季節、この時期にも長沢背稜を登る登山者は少数なりともいるらしい。
ここからは勝手知ったる三峰縦走路である。芋ノ木ドッケからは急峻な下りがあり、凍結していて危険であり、慎重に降りる。「・・・12月から4月まではここは凍結し、事故が多発しています・・・アイゼンなどの装備を持っていない人、技量が伴わない人は引き返してください」という看板あり。そんなこと言われても、もう通ってきちゃったし。で、大ダワ着13:50。ここから大ダワ林道が延びている。ここから雲取方面は「男坂」と「巻き道」とに分かれているが、以前通った「男坂」は避けて、傾斜が楽で雪道でも問題ないと思われた「巻き道」を選択。ほとんど滑ることもなく14:12雲取山荘。ここからのラスト100mが大問題だった。ここは山荘までの道と違い、階段で固められていること、そして雲取山で食事付きの豪華な宿泊が出来るのは(個室まであるらしい・・・ホントに山荘か!?)ここだけという事情から、雲取山で一泊しようという登山者のほとんどはここを目指して歩いてくるので、北面のこの道は踏み固められて凍結していたのだ。迷わずアイゼン付けるのが正解であったが、何とか乗り切れるかなと思ったが一度転倒、そしていったん転倒するとクセがつくようで(たぶん疲労が重なっているからそういうことが起きる)二度目の転倒では顔面から落ちてしまう。幸い、眼鏡に損傷はなかったが(眼鏡が割れたりすると帰れなくなる)鼻梁と口を強打、鼻血は出るし唇は腫れ上がるし、散々であった。そして14:37頂上到達。ほぼ七時間かかったことになる。到底飛竜縦走は不可能だ。それよりどうやって帰るか・・・
下山路としては、三つ考えていた。
1)最短ルートである鴨沢ルート
2)三条の湯ルート
3)大ダワ林道
2),3)は、後半の林道歩きが大変だが、逆に山道を歩くのはせいぜい一時間くらいだろうから、安全性が高いというところがポイントである。しかし、大ダワ林道は沢沿いで、路面凍結の可能性があって、三条の湯ルートが安全だと考え、選択した。しかし、ここに重大な誤算があったのである。
奥秩父縦走路の分岐点である三条ダルミまでは250mの急降下であり、凍結していて足場も悪い。転倒しないように慎重に降りてゆく。一度だけ転んだが、スライディングで実害はなかった。三条ダルミ15:04。意外に早く着いた。ここからの展望はよいようであるが、確認している余裕はなく、それにじゃっかん曇ってもきていた。
あとはひたすらトラバースを三条の湯に向けて下る。南面だが、ところどころ日が差し込まない部分には積雪が残っていて、凍結している。転倒しないよう十分に気をつけ急ぐ。かくして16:18三条の湯に到着。正月を雲取で迎えるであろう多数の登山客が宿泊していた。筆者も時間さえあれば入浴していきたいところであったが・・・
ここからは後山林道の終点までしばらく歩くことになる。気付くと前方に二人連れの人がみえる。親子か夫婦だろうか? ひとりはカゴを背負っている。実は彼らは神の化身だったのである(あとでわかった)。
ちょうど後山林道の終点で彼らに追いつく。二人は親子であり、「三条の湯」と書いたバンに乗り込むところであった。ああ、そうか、山荘のご主人なのだな、そう思った。
彼らを追い抜いて後山林道を疾走中に、さっきのバンが追いついて、停車した。
「荷台でよければ乗りませんか?」
ここから後山林道のゲートのところまで荷物のように荷台の上でバウンドしていた。ゲートのところで降ろして頂いたのだが、この片倉橋ゲートからバスの走る国道411号線までは2.3km。ほどなく国道まで着くのだが・・・
まず、時間を確認。バス停に着いたのがだいたい5:20くらい。辺りはすっかり暗くなっていた。そして奥多摩駅行きのバスは18:31発。それはわかってはいたのだが・・・あらためて確認すると、三条の湯からふつうに下山すると、2時間50分かかるとなっている。そして筆者が三条の湯に到着したのが16:18。まともに下山していたらこのバスに間に合わなかった可能性が高かった。おまけに、バス停で確認したらいくつかの事実があきらかになった。
まず、ケータイの電源が切れかかっていて、通話が不可能であったこと。筆者のblackberryは電池の持ちがよいのだが、ある設定では山間部できわめて電池の減りが早いのだ。下山したお祭には電話ボックスなどというものは存在しない。タクシーを呼ぶわけにもいかないのである。さらにびっくりしたのは、ヘッドランプが点灯しないこと! ということは、もしバンに拾って頂けなかった場合、あの林道を真っ暗な中歩き続け、しかもお祭から鴨沢の部落へ移動し(バス停の上にあったお祭山荘は人の気配なし)そこでタクシーを呼ぶという仕儀になったわけだ。
やはり正解は鴨沢へ下山するべきだったのだろう。後半は植林の中で危険のない道だし、飛ばせる。最悪七ツ石小屋へ泊まる手もある。それより問題だったのは、筆者の危機管理の甘さである。
1)事前にどの山に登るか(というか、ルートを)決めてこなかった
これで時間の誤算が生じたわけである。後山林道は二時間で踏破できると思っていた。
2)ケータイの予備電池が必要である
Blackberryといえども条件次第では一日で電池がなくなってしまう。これは常時電源をつけておかなければならない筆者の特殊事情かもしれないが。
3)装備は毎回点検すべし
ヘッドランプは、何と電池の向きが全部逆になっていた。前回充電の時に向きを間違えたらしい。ちゃんと点灯するかどうかを確認しておかねばならなかった。ましてや、いつもは懐中電灯も一緒に持ってゆくのだが、このところ電灯の携行を怠っていた。
4)アイゼンはちゃんと装着しよう
付け外しが面倒でつい怠ってしまうのである。単なる路面凍結だけなら、こんなものでもいいのかもしれん・・・取り外し楽だし、ないよりはマシだろう。
5)体力を考えよう
こんかい、いつもの軽装トレランあるいはファストトレッキングスタイルではなく、アイゼンを積み重登山靴を履いたクラシックスタイルであった。一足1.3kgの重登山靴を履くだけで歩みは格段に遅くなる。それでも、ふつうの登山者よりは早く歩いていたと思うのだが。
顔面を少々怪我しただけで済んだのは不幸中の幸いというしかない。それにしても三条の湯のご主人さん、本当にありがとうございました。是非次には入浴させてください ^^